
噂の発端:漫画と風水師の予言
2021年に発行された龍たつき氏の漫画『私が見た未来 完全版』では、2025年7月に日本で大災害が起こるという描写がありました。この作品はベストセラーとなり、多くの読者に影響を与えました
さらに、香港の著名な風水師も同様の予言を行ったことで、香港市民の間で不安が広まりました。
2. 航空業界への影響:予約の急減
これらの予言がSNSを通じて拡散され、香港から日本への旅行需要が急減しました。
特に、香港を拠点とするグレーターベイ航空は、仙台や徳島への便の予約率が通常の80%から40%にまで落ち込んだと報告しています。
この影響で、同航空はこれらの路線で週1便の往復便を一時停止する決定を下しました。
3. 日本政府の対応と科学的見解
日本政府の内閣府は、2025年4月24日に公式X(旧Twitter)アカウントで、「現在の科学的知見では、地震の発生時期や場所を特定して予測することは困難である」と発表しました。
これは、南海トラフ地震の発生確率が今後30年で80%とされる中で、具体的な日時を示す予言が広まったことへの対応です。
4. 観光業への影響と地域の懸念
宮城県の村井嘉浩知事は、2025年4月23日の記者会見で、「科学的根拠のない噂が観光に影響を与えるのは大きな問題だ」と述べました。
また、日本の観光庁も、香港や中国、台湾での噂の広がりを把握しており、訪日予定者のキャンセル情報を収集しています。
5. 社会心理と情報の拡散
日本大学の中森弘道教授は、日本では地震の頻度が高いため、潜在的な不安があり、噂が広まりやすいと指摘しています。
彼の指導する中国人留学生6人も、SNSで「7月5日に地震が起こる」という噂を目にしたと述べています。
中森教授は、過去の研究から、著名な予言者の発言が引用されることで、噂が周期的に広がる傾向があると述べています。
6. 航空会社の対応と今後の展望
グレーターベイ航空は、成田や関西への便数を減らす予定はないとしています。
一方で、同社は新しい航空機の納入遅延や既存機の定期点検の必要性から、2025年2月と3月に128便(64往復便)をキャンセルし、約5,500人の乗客に影響を与えました。
この問題に対し、香港政府の運輸・物流局は、同社に報告書の提出を求め、再発防止策の検討を進めています
まとめ:情報との向き合い方
今回の事例は、科学的根拠のない情報がどのように社会に影響を与えるかを示しています。
SNSの普及により、情報の拡散速度は増していますが、その真偽を見極める力が求められます。
旅行者や観光業界は、正確な情報に基づいた判断を行い、過度な不安に惑わされないよう注意が必要です。