
2025年2月、日本政府は新たな気候・エネルギー戦略を閣議決定し、2013年度比で2035年までに60%、2040年までに73%の温室効果ガス(GHG)排出削減を目指すことを発表しました。
この目標は、2050年までのカーボンニュートラル達成に向けた中間目標として位置づけられ、再生可能エネルギーと原子力の活用を柱としています。
新たな削減目標とその背景
日本の新たな削減目標は、2013年度の排出量を基準とし、2035年までに60%、2040年までに73%の削減を目指すものです。
この目標は、パリ協定の下での国別削減目標(NDC)として国連に提出される予定です。
これまでの目標である2030年までの46%削減から大幅に引き上げられた形となり、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた道筋を明確に示しています。
エネルギーミックスの見直し:再生可能エネルギーと原子力の役割
新たなエネルギー計画では、2040年までに電力供給の40〜50%を再生可能エネルギーで賄い、原子力発電の比率を20%に引き上げることが目標とされています。
これにより、化石燃料への依存度を大幅に低減し、持続可能なエネルギー供給体制の構築を図ります。
特に、福島第一原発事故以降、停滞していた原子力発電の再評価が進められ、安全性の確保を前提に再稼働や次世代炉の建設が検討されています。
再生可能エネルギーの拡大と課題
再生可能エネルギーの導入拡大は、太陽光、風力、地熱など多岐にわたります。
特に洋上風力発電の導入が注目されており、2030年までに10GW、2040年までに45GWの導入を目指しています。
しかし、開発コストの上昇や供給網の課題など、実現には多くの障壁が存在します。
政府は、これらの課題に対応するため、技術開発やインフラ整備への投資を強化しています。
原子力発電の再評価と安全性への取り組み
原子力発電の再評価にあたり、安全性の確保が最重要課題とされています。
国際原子力機関(IAEA)のグロッシー事務局長が新潟県の柏崎刈羽原発を訪問し、安全基準の遵守状況を確認するなど、国際的な視点からの安全性評価も進められています。
また、地域住民の理解と協力を得るための対話や情報公開も重視されています。
経済成長と環境保護の両立
新たな気候戦略は、環境保護と経済成長の両立を目指しています。
再生可能エネルギーや原子力発電の導入拡大は、新たな産業や雇用の創出につながると期待されています。
また、エネルギーの安定供給と価格の安定化により、企業の競争力強化や国民生活の安定にも寄与することが見込まれています。
今後の展望と課題
日本の新たな気候戦略は、野心的な目標を掲げつつも、多くの課題を抱えています。
再生可能エネルギーの導入拡大には、技術的・経済的な課題があり、原子力発電の再評価には、安全性や地域住民の理解が不可欠です。
政府は、これらの課題に対処するため、政策の柔軟な運用や関係者との協議を重ね、持続可能なエネルギー社会の実現を目指しています。